グローバルな視野とインフラの知見で核融合開発PJを支援するコンサル会社。
株式会社フュージョンマネージメント
代表取締役社長 青木 俊一郎
父の仕事の関係で18歳までインド・フィリピン・アメリカなど海外で過ごす。帰国して慶應義塾大学を卒業後、三菱電機株式会社に入社。人工衛星システム関連の業務に従事。準天頂衛星システム「みちびき」や宇宙太陽光発電システムなど、数々の政府系宇宙プロジェクトに関わる。12年勤務した後、デューク大学経営大学院に進学。起業したいという思いが芽生え始める。MBA修了後、PwC Consulting Strategy&に入社。国際核融合エネルギープロジェクト(ITER=イーター)をはじめ、政府系プロジェクトにおけるコンサルティングを担当。2018年1月、株式会社フュージョンマネージメントを設立、代表取締役社長に就任する。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
海外生活で養われたグローバル感覚。
私は外交官だった父の仕事の関係で、長く海外で暮らしました。18歳になって日本に戻るまで、海外で11年ほど過ごしたことになります。おかげで、語学は相応の力が身につきました。
日本の大学に通い、卒業後は三菱電機に就職。これは、同社が人工衛星など宇宙関係の事業をやっていると知り、グローバルなインフラを支える仕事に夢を感じたからです。
人工衛星開発は、行政や政府系研究機関と頻繁なやり取りが必要です。私は営業として、そういった方々との折衝や提案を行いました。2010年に打ち上げられた準天頂衛星「みちびき」のプロジェクトにも関わっています。
三菱電機で12年過ごした後、アメリカのデューク大学大学院(MBA)へ進学。ここでアントレプレナーシップやインターナショナルのリーダーシップスキルなど、起業・経営に直結する理論を学びました。そのうちに、「いつか、自分の手でグローバルな仕事を手がけてみたい」という思いを抱くようになりました。
核融合プロジェクト(ITER)との出会い。
MBAを取得して卒業後、スキルを身に着けようと、アメリカのコンサルティング会社であるPwC Consulting Strategy&に入社。そこで担当したのがITER(イーター)、核融合実験炉を開発するための国際プロジェクトです。
核融合は、水素の同位体である重水素・三重水素の原子核を高速で衝突させることで起こるもので、太陽も同じ原理でエネルギーを生んでいます。この巨大エネルギーを発電などに利用するわけです。小さな太陽を地球上で再現する試み、と言ってよいでしょう。
核分裂反応を利用する原子力発電と比べると、核融合炉ははるかに安全で、原料調達も容易。世界のエネルギー問題を解決すると期待されるのですが、実用化にはなお高いハードルがあります。そこで、ITERに日本やアメリカなど世界7ヶ国・地域が参加し、役割を分担して研究・開発を進めています。
日本は核融合実験炉の開発に関する高い技術があり、一流の研究者が揃っています。その一方、国際プロジェクトを進めるノウハウや、海外機関とネゴシエートした経験を持つ人は多くありません。そこで、私はコンサルタントとして、ITERを進める国内の中核組織である量子科学技術研究開発機構(QST)で、プロジェクトマネジメント支援を行っていました。
QSTと私は、クライアントとコンサルタントというより、仲間や同志という関係に近いかもしれません。4年後、PwCを退職する際に「引き続きITERに関わってほしい」と声をかけてもらい、その後押しもあって私はフュージョンマネージメントを起業する決意を固めることができたのです。
プロジェクトの管理・折衝・運営をサポート。
現在も、QSTにおけるITERプロジェクトの支援を継続しています。研究者のみなさんは研究や論文執筆が本業のため、ITERプロジェクトに割ける時間は限られています。また、研究者の中にはプロジェクト管理や国際的な交渉を不得手とする方もいます。私たちの仕事は、そういった面からサポートすることです。
資料作成やさまざまなコスト分析など、課題や相談ごとは日々発生します。そこで、案件に関わる担当者は、茨城県にあるQST那珂研究所のオフィスにデスクを用意してもらい、そこで業務を行うことも多くあります。
今、QSTが開発や調達を進めている機器のなかには、遠隔で操作のできる、巨大産業用ロボットがあります。これは、核融合で発生したプラズマによって傷ついた炉内の壁を修理・交換するための保守機器です。核融合によって放射性廃棄物が発生している炉内に、人間が直接入ることはできません。そこでロボットを遠隔操作するわけです。
巨大な炉内で、狙った位置に、高精度で部品を運ぶのは大変難しいのですが、この課題を克服できる技術が日本にはあります。私たちはこういったプロジェクトのマネジメントをお手伝いしているのです。
ITERプロジェクトは、協定に基づき2030年代以降も継続する見込みです。まだ少なくとも20年はかかる長大なプロジェクトで、その後も実用化に至るまでにはさらに時間がかかります。おそらく私たちが生きているうちに、実用化まで見届けることはできないと思いますが、人類の未来のために腰を据えて協力していきます。
特徴を活かし、新たな市場の開拓を目指す。
行政系、インフラ系、また国際プロジェクトのマネジメントに強い、という当社の特徴を発揮できるものであれば、新たな分野・市場の案件にも取り組んでいきたいと考えています。
業務効率化、業務・組織変革、あるいはIT・DX化などの課題を抱えるところは、政府機関でも民間企業でもたくさんあるでしょう。
ただし、あまり四方八方に手を広げるつもりはありません。やみくもに成長を目指すのではなく、自分たちの得意分野を活かせる領域で、着実に事業を進めます。
従業員のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の充実にも力を入れていくつもりです。当社で働く社員は、前職が日本を代表するような大手企業の社員だった人も珍しくありません。そういった方々が振り返った時、「フュージョンマネージメントに来てよかった」「この会社が一番居心地いい」と感じてもらいたいのです。
待遇に関しては可能な限り前職レベルを維持できるよう考慮していますし、スキルアップのための研修や講座にも、どんどん参加してもらっています。これまで国内でしか仕事をしてこなかった人も、グローバルなステージで活躍できるよう、成長の機会を設けています。
従業員のQOLを大事にしたい。
当社には「全方位リスペクト」という言葉があります。お客さまに対しては当然として、社内の上司・部下、先輩・後輩であっても、また家族や友人にも、互いに敬意を払おうということです。
ITERの組織には研究者ばかりでなく、派遣スタッフや外注業者、オフィス清掃スタッフなど、さまざまな方が働いています。直接的なクライアントだけではなく、これらの方々にも敬意をもって接するよう心がけています。
私自身、自社の社員に話しかける時でも、敬語を使います。また従業員からは「社長」ではなく、「青木さん」と名前を呼んでもらうようにしています。社長という職責上、私が従業員に対して指示をするケースは多いですが、それは単に役割が違うだけ。業務においては互いに対等なのですから、肩書の呼び名はふさわしくありません。
言い換えるなら、誰に対しても誠実であってほしい、ということでしょうか。誠実な人とは、気持ちよく仕事ができます。そういう人が集まってくれる会社にするためにも、QOLを整えなければならない、と思うのです。
働き方に関しても、自由度は比較的高いと思います。家族の事情などで出社が難しければ、リモートワークも積極的に活用してもらっています。始業は9時にしていますが、さまざまな状況で10時から働くのがベストなのであれば、それもよいでしょう。一人ひとりがプロフェッショナルだからこそ、時間の使い方は基本的に任せています。
また当社では、形式上定年を設けてはいますが、元気なうちは70歳でも80歳でも、満足行くまで仕事をしてほしいと思います。実際、当社には68歳の社員もいます。
地球規模のコンサルに腰を据えて取り組める。
お客さまの期待に応えるため、まだまだ仲間が必要です。コンサルタント経験があると、仕事に馴染みやすいかもしれません。しかし、経験の有無はそれほど重視しません。実際、当社で活躍する社員の大半は、コンサルタント未経験です。
大切なのは、やはり誠実であることです。プロジェクトを進める上で、協調性は欠かせません。行政の人々や国内外の専門家とチームワークを築くには、誠実さ、真面目さが重要なのです。
当社では、ITERを始め、地球規模で進む国際的なプロジェクトのマネジメント支援や、コンサルティングに関わることができます。一般的に、コンサルタントは3ヶ月~半年といった期間でアウトプットを求められますが、当社の案件は数年、数十年単位のものばかり。じっくりと腰を据えて取り組めるのも、他のコンサルタントと大きく異なる点でしょう。
もちろん、語学を磨いてこられた方は、スキルが十分活かせます。当社ならではのやりがいを感じていただけるのではないかと思います。
当社には、自分の役割を果たすことに誠実な仲間が大勢集まってくれています。私は皆に「最後は私が責任を取るので、存分に仕事を楽しんでください」と話しています。あなたも当社でさまざまなことに挑戦してください。責任はすべて私が負います。遠慮することはありません。