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社員の声を、成長の力に。茨城発のIT企業が100億円を目指す理由。

株式会社ユードム
代表取締役社長 森 淳一

更新日:2026年9月30日

1976年、茨城県水戸市生まれ。水戸第一高校、東京理科大学を卒業後、2000年に日本オラクル株式会社へ入社。大阪・広島・東京で、自動車メーカーをはじめとする製造業や流通・サービス業の営業を担当し、入社4年目には同期のエンジニアと広島拠点を立ち上げる。2013年、株式会社ユードムに入社。営業課長、営業部長、取締役、常務取締役を経て、2018年に代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

この記事でわかること

  • 組み込み・業務系ソフトウェア開発を担う、水戸発のユードム
  • 社員の声から制度を変え、働き続けられる会社をつくる
  • AI時代に備え、顧客の構想を形にする上流工程を強化
  • 東京の仕事を水戸で担い、社員の希望と事業拡大を両立
  • 賃上げを起点に、社員が担う仕事の付加価値を高める経営

日本オラクルでの13年を経て、37歳で父の会社へ。

ユードムは、父が1976年に水戸市で創業した会社です。日立製作所グループ向けの組み込みソフトウェアや生産管理システムの開発から始まり、取引先を広げながら業務系ソフトウェアやGIS(地理情報システム)にも事業領域を拡大してきました。

2026年9月に創業50年を迎え、現在は水戸、土浦、東京、名古屋に拠点を置いてクラウドの導入支援やIoT、自社製品の開発にも取り組んでいます。

私は中学から大学まで野球を続け、高校と大学では主将を務めました。就職活動を始めた頃はIT業界が盛り上がり始めた時期で、将来ユードムへ入ることも選択肢にはありましたが、それを前提に進路を決めたわけではありませんでした。

知人から「日本オラクルが面白い」と聞き、自分でも調べて入社しました。エンジニアとして採用されたと思っていましたが、新人研修の営業実習で58人中1位になり、営業職に配属されました。地方拠点の方が幅広い経験を積めると考えて支社勤務を希望し、大阪を経て、入社4年目には同期のエンジニアと二人で広島拠点を立ち上げました。

日本オラクルの仕事は楽しく、13年間働くうちに、ユードムへ入るという考えは次第に薄くなっていました。改めて家業を意識したのは、子どもが生まれ、父から会社の状況を聞くようになってからです。

父が創業した会社があり、自分にも営業として培ってきた経験がある。それなら新しい挑戦をしてもよいのではないかと考え、2013年、37歳でユードムに入社しました。

営業先を増やす前に、社員が辞めない会社にしたかった。

入社当時、社内には営業を専門とする社員が一人もいませんでした。そこで営業課長という肩書をもらい、日本オラクル時代にお世話になったお客さまを回ると、いくつも相談をいただきました。

ただ、エンジニア社員の多くがお客さま先で仕事をしていて、新しい案件を受ける余裕がなく、ほとんど受注につながりませんでした。

一方、社内では毎年10人以上の新卒社員を採用していたものの、同じくらいの人数が退職していて、社員数は長い間200人弱のままでした。

営業の仕事は案件を獲得することですが、「売上を増やすなら、まず人が辞めない会社にする方が先ではないか」と考え、退職を決めた社員を一人ずつ食事に誘って理由を聞きました。

さらに在籍中の社員の声も聞く必要があると考え、20~30代の約120人全員に声をかけました。その呼びかけに応じた社員を14組に分け、会社の改善案を考えてもらったのが「プロジェクトW」です。実行できるものは時期を示し、できないものは理由を返すと約束しました。

プロジェクトとの因果関係までは断定できませんが、具体的な制度を変える前から離職は目に見えて減り、社員からは「会社が社員のことを考えようとしている」「これから良くなりそうだ」という声が聞かれました。将来自分が社長になるなら、入社してくれた社員が満足して働ける会社にしたいと考えるようになりました。

直近では離職率が2%台まで下がり、新卒と中途を合わせて年間30人を超える社員を迎えています。さらにM&Aも加わって組織は大きくなっています。人が増えたから仕事を広げられ、仕事が広がることで新しい人を迎えられるようになりました。

「自宅で働けないか」。社員の相談から制度を変える。

リモートワークはコロナ禍より前から導入していました。きっかけは、育児休業から復帰した社員からの相談です。子どもが保育園になかなか慣れず、出社していると必要なときに迎えに行けないため、自宅で働けないかという相談を受け、仕組みを整えました。

その後、コロナの拡大によって在宅勤務が必要になった際も、すでに制度があったためスムーズに移行できました。

育児短時間勤務を利用できる期間も、小学校卒業までから中学校卒業までに延ばしています。社員の子どもが地域のクラブへ通うことになり、送迎が必要になったためです。業務への影響は大きくないと判断して役員会に提案し、すぐに変更しました。

ほかにも、コアタイムを設けないフレックスタイム制度を導入しています。通院などで勤務を中断した場合も、月内で業務時間を調整することができます。すべての要望に応えられるわけではありませんが、社員にとって必要で会社にも大きな支障がなければ、制度の改善を進めています。

受託開発で培った技術を、クラウドとコンサルティングへ。

当社は、お客さまから要望を聞き、要件を定め、設計し、一からシステムをつくる受託開発を得意としてきました。

開発力はこれからも必要ですが、AIがプログラムを書く時代には、お客さまが実現したいことを聞き取り、どの技術を使いどのように実現するかを考える上流工程の重要性が増します。そこで、クラウドソリューションとコンサルティングを強化しています。

企業の基幹業務を一元管理するクラウドERP「Oracle NetSuite」では、導入コンサルティングや追加開発の実績を重ね、2025年に「Oracle NetSuite Japan Rookie Partner of the Year 2025」を受賞しました。

ServiceNowについても社内に研修プログラムをつくり、未経験からスキルを身につける環境を整えています。社員が受託開発で培った技術を生かしながら、より付加価値の高い仕事を担える体制をつくっています。

AWSでは、茨城県内に本社を置く企業として初めて公共部門のパートナープログラム認定を取得しました。つくば市とは、個人情報を扱う行政の基幹業務で生成AIを活用する共同研究を行い、他社に先駆けてガバメントクラウド上で生成AIの活用事例を実現しました。自治体における最先端事例として、今後はほかの自治体への展開を目指しています。

東京の案件を水戸へ。2035年、売上100億円を目指す。

ユードムグループは、2035年に売上高100億円を達成する目標を掲げています。2025年度の連結売上高は約54億円で、この10年で約2倍になりました。成長が止まれば新しい技術や人材育成へ投資しにくくなるため、次の10年も高い目標を置いています。

基本となるのは、既存事業を年平均6.4%のペースで伸ばし、M&Aを行わなくても100億円に到達する計画です。M&Aは、顧客、業種、地域の幅を広げ、成長を加速させる手段として考えています。

成長の柱として期待しているのは、「Oracle NetSuite」や「ServiceNow」などのクラウドソリューション事業、自社製品を開発するイノベーションラボ、地域外の案件を担う水戸開発センターです。

イノベーションラボでは、オフライン環境のPCを安全に遠隔操作する独自技術を用いた「Remorator310」を2026年にリリースしました。今後も自社の技術を用いた新しい製品開発を進めていきます。

また、水戸では全社員のおよそ半数が働いていますが、IT市場は東京などの方が大きい。地元企業同士で限られた仕事を取り合うのではなく、東京やほかの地域の案件を水戸へ持ち込み、水戸で働きたい社員の希望と事業拡大を両立しようと設立したのが水戸開発センターです。

これまでに複数のM&Aを行い、それまで接点のなかった顧客を持つ会社や、医療分野の開発に強い会社がグループに加わりました。現在は名古屋での成長を加速させるための取り組みも進めています。既存事業を伸ばしながらM&Aも活用し、顧客、業種、地域の幅をさらに広げていきます。

10年で平均年収100万円増へ。給与を先に上げる経営。

2020年からは、10年間で社員の平均年収を100万円引き上げる目標にも取り組んでいます。利益が出てから給与を上げるのではなく、先に給与を上げ、その水準に見合う利益をどう生み出すかを考えています。2023年の平均賃上げ率は2.7%、2024年は5.6%、2025年は5.4%でした。

給与を上げ続けるには、同じ仕事を続けるだけでは足りません。クラウドやコンサルティングへ事業を広げることも、社員一人ひとりが担う仕事の付加価値を高めるためです。

社員の約4割を20代が占め、事業の拡大に対して管理職の育成が追いついていないことは課題ですが、見方を変えれば経験を生かして管理職を担いたい方にも、若いうちから上を目指したい方にも機会があります。

組織が大きくなっても、お客さまに真面目に、誠実に向き合う文化は薄れさせたくありません。一度仕事を任せていただくと、継続して依頼をいただくことが多く、その信頼が事業の基盤になっているからです。

一緒に働く社員が幸せになれない会社なら、社長を務める意味がないと思っています。会社が成長する過程では厳しい仕事をお願いすることもありますが、社員全員が「ユードムで働いてよかった」と思える会社に近づけていきます。

編集後記

コンサルタント
佐藤 照昭

今回、特に印象に残ったのは、「利益が出たら給与を上げるのではなく、先に給与を上げ、それに見合う付加価値を生み出す」という森社長の言葉です。

営業として入社した当初、仕事を増やす前に退職者や若手社員の声を聞くことから始めたエピソードにも、社員を大切にする姿勢が表れていました。制度を整えるだけでなく、寄せられた声に応え、実際に会社を変えてきたからこそ、現在の成長につながっているのだと思います。

100億円という目標も、規模を大きくすることだけが目的ではありません。社員への還元や新しい挑戦に必要な力をつけるための目標です。今後の成長を支える人材との出会いを、私たちも引き続きお手伝いしていきます。

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